スペシャル:イベント

SPECIAL:EVENT

2019.12.03
第58回日本SF大会『アニメ「星界の紋章」放送20周年記念上映会』
2019年7月27日 @大宮ソニックシティ

まずは自己紹介をお願いします。

 

森岡

森岡浩之でございます。

アニメの放送から20年と言われて、そうか20年も経ったのかと驚いています。

BD用にキレイになった映像をご覧いただけるようなので、長らく星界におつきあいいただいている方も、今日はじめて星界に接するという方も、楽しんでいただければと思います。

 

米村

漫画家の米村孝一郎と申します。

今、コミックメテオというwebマガジンで星界の紋章のコミカライズを担当させていただいてます。ずいぶん長い間かかっていますが、もう少しで完結します。

今日はアニメの上映ですが、僕は個人的に長岡監督とも親交がありまして、アニメはコミカライズの参考にさせてもらっています。

 

 

 

米村さんにお尋ねします。そもそも、どういう経緯でコミカライズのオファーがあったのでしょうか?

 

米村

そうですね。

コミックメテオは資本関係が何度か変わっているんですけど、星界を始める当時の社長が個人的にファンで、是非コミカライズをやりたいと言ったらしいです。

それで僕に話が回ってきたようです。編集部としてはキャラクターが描けてメカも描けて米村がいいんじゃないかということのようでした。

僕も、前の作品が完結して、次はどうしよう?と考えてた時期で、タイミングが良かったんですね。結果、前作と同じ編集部同じ担当でスタートすることになりました。

 

森岡さん、コミカライズの話が出たときはどうでしたか?

 

森岡

紋章のコミカライズは2回目で、最初のは小説のコミカライズというよりアニメのコミカライズという側面が強くて、1巻だけで完結しました。今回はじっくりとやってくださるということでした。

最初に話を聞いたときは…どうだったかな、えーと、当時webマガジンっていうのは、まだハシリですよね? いまはスマホをメインターゲットにした漫画アプリがたくさんあるけど。だから、「webだけというのはどうなんだろう?」とはちょっと思いましたけれども、ともかく絵にしてしていただけるなら是非ということで返事をしたと思います。しかも描いていただけるのが米村さんだというので、一も二もなくお願いしますと言ったんじゃないかな。

 

米村さん、ここであらためてプロフィールを教えていただけますか?

 

米村

創作同人マンガをコミケで描いて出していたんですけど、大学卒業間近になって、このままプロになれないかなと考えたんです。出版社に持ち込むのが筋なんでしょうけど、それはしなかった。

同人仲間やその周囲にいわゆるフリーランスの編集者さんがいっぱいいたという時期なんですね。

で、ぼくもそういう人たちと付き合いがありましたので、話をして…。

「どこかで仕事がないかね」という持ち込みをフリーランスの編集に対してしていた。

そういう人たちは出入りの編集プロダクションに話をするので、大手出版よりは編集プロダクションが身近だったのでそっちに。

その中の編プロに「ドラゴンマガジン」の編集をしているところがあって、とある連載の原稿が落ちて、代原がないかという話がきて、それがデビューです。

当時は、同人作家をコミケでスカウトする青田買いが始まったころで、90年前後ですか、コミケで同人作家をピックアップして商業誌デビューをさせようという第一陣だったですかね。

正確にはその半年前くらいからホビージャパンさんでイラストの仕事をしてたのですが、漫画家としては「ドラゴンマガジン」がデビューですね。

それからしばらく富士見書房さんとホビージャパンさんで漫画の仕事をしていました。

 

90年代の同人誌の世界というのはけっこう横のつながりが広くて、当時はアニメ会社やゲーム会社で仕事をする友達がいっぱいいたんですね。その縁で、ああいう企画があるとかこういう仕事があるとかという声がかかって。「あぁ!それやってみたい」っていろいろ手を出しました。4-5年続くものも、1回限りのものもありましたけど、それの最初期のものがゲームアーツさんの『シルフィード』で、これのメカデザインとか下請けで「企画デザイン工房戦船」さんというところがありまして、当時アニメーション作品の「爆裂ハンター」とか「機動戦艦ナデシコ」とかのデザインも担当してまして、そこのデザインのお手伝いをちょこちょこやりながら、マンガを描いてました。そのまま現在に至る感じです。だいぶ端折りました(笑)

 

 

 

森岡さん、先日、BDボックス用に、『紋章』第2話にコメンタリーをお願いしましたがいかがでしたか?

 

森岡

監督と、川澄さんと三人でしゃべりましたね。

『紋章』の1話には川澄さんが出てこないので『紋章』に限っては第2話にコメンタリーを入れるということになりまして。『戦旗』『戦旗Ⅱ』『戦旗Ⅲ』は同じメンバーで第1話にいれました。

その収録で久しぶりアニメを見ましたけど、わたしは違和感を感じなかったんですけど、川澄さんはだいぶ恥ずかしがってましたね。

 

 

アニメの1話、いきなりアーヴ語のナレーションから始まりますけど、翻訳は森岡さんが担当されてますよね。

 

森岡

ええ、やりました。アーヴ語は、まさか発音されるとは思って作ってなかったので、いろいろ大変でしたが。

 

アニメ化の際、監督からアーヴ語でやりたいって言われたときどう思われましたか?

 

森岡

そうですね「ああ、変わったことをするんだな」と。

まぁ、なかなかない試みだと思いますけど。

最初に話を聞いたときに、ああそうか、翻訳は、まぁわたしがするんだろうなと。

翻訳自体は、けっこう面白かったんですよ。いろいろな文章をアーヴ語で作るのが楽しくてですね。あとは、発音記号かなにかで書いて渡したら終わりだと思ってたら「それじゃわかんないので」って言われて、結局わたしがお手本の録音をすることになって。それがすごく嫌でした(笑)。

 

アーヴ語の翻訳は森岡さん以外にはできない仕事ですが、それでも原作者がアニメの現場にスタッフとして参加するというのは、大変だったのでは?

 

森岡

さっきも言いましたが翻訳自体は面白い試みだなで済んだんですが、その後は毎週アーヴ語のお手本の録音をすることになって、勘弁してほしいなとずっと思ってました。

だけど、もとはと言えば、わたしがアーヴ語を作り出して、小説でルビを振りまくったのが遠因なわけだし、結局因果は巡る?(笑)わりと諦めモードで録音してました。

 

 

アニメ化は、その嫌なことを除けばウエルカムな感じでしたか?

 

森岡

もちろん、喜んでました。

最近は、なろう系とか、わりとアニメになりますけど20年前は小説原作のアニメって、そんなになかったんですよね。だからすごくうれしかったです。

 

コミカライズに際してアーヴ語の苦労はありますか?

 

米村

アーヴ語はですね、セリフの中に入ってる分には原作からそのままもってくるので、ぼくの苦労はその部分ではありませんでした。歴代担当編集さんが、どこまでアーヴ語のルビを振るのか、都度都度に考えてやってくれてました。

問題は、フォントの方で、背景にアーヴ語の看板とか描くときにどうするのかいうのは、今も悩むんです。

たとえば、うしろに「なんとか商店」というのがあってその看板を描こうとすると、アーヴ語に訳さないと描けない。そうすると、森岡さんに翻訳してもらう以外に手がないんですが、その手間暇をかけて、そこに「なんとか商店」って描くメリットはあるのか?と考えてしまうわけです。あまり意味のない背景のために翻訳をお願いしていいものかどうかとか。

 

森岡

それくらいやりますから言ってください。

漫画でしたら翻訳するだけで、わたしがスタジオに入って録音する必要がまったくないから大丈夫です(笑)

ただ、アーヴ文字というのは小説の設定というよりむしろアニメの設定なので、忘れちゃうんですよ。音の翻訳はできるので、それをラテン文字に書くことはできるんですけど、そこから先、アーヴ文字にするのがちょっと自信がないかも(笑)

 

米村

今、幻想園のところを描いているんですけど、その看板をアーヴ語で描こうと思ったら、まず翻訳とスペルを森岡さんにお願いして、いただいたスペルで看板のデザインをしてという段取りになっちゃうので煩雑かなと。

 

森岡

グゾーニュ幻想園ってのはたしか、原作で「幻想園の馬」という章タイトルで使ってて、章タイトルはアーヴ語のルビを振ることにしてるんで幻想園というアーヴ語は作ってるはず(笑)

ただカタカナなんで、スペルをアーヴ文字でって言われると、たしかにひと手間かかります。

でももう原稿できちゃってますもんね。次の機会があれば遠慮なく言ってください。

 

米村

ありがとうございます。

まだ幻想園は終わってなくて、今、お土産のマグカップにカワウソのキャラクターを描いたりしてるんですが、カワウソっていうのはアーヴ語でなんていうんだろう?というところから始まって、いや、種族名じゃなくてキャラクター名があるのか?ということを考えだすと、もうどうにもならないんで(笑)。

象徴的なひとつふたつだけをアーヴ語で背景に描くくらいにしたいんですけど、毎度毎度それをお願いするもの気が引けるのと、やりだすといつまでかかっても原稿が終わらなくなるので(笑)。

 

ぼく、今回のコミカライズでは極力原作のセリフをカットしないという方針で進めているんで、背景のアーヴ語のマンガ的表現に関しては、次にコミカライズをやられる誰かに任せたいと(笑)

 

 

アニメにない家紋のデザインなど新たに起こしていただいてますよね。

 

米村

アニメは手描きの頃の設定なので、デザインとか簡略化して線を少な目にしてる気がするんです。いまマンガはデジタル作画でやってるので多少凝ったデザインでもなんとかなるのでいろいろ挑戦してみてはいます。

作画の合間にデザイン起こしをするのでそんなに多くはできないんですが、今回はスポールの家紋とフトゥーネの艦隊旗を作ってみました。作るのは楽しいんですが、ちょっと失念しちゃってたのは、赤井さんのデザインはアーヴの出自を受けて、和装を中心にアレンジされてるんですよね。スポールの家紋、ヨーロッパの紋章学を参考に作っちゃったんですけど、日本の家紋をベースに作った方がより作品世界に沿うのかなと。

こんど作り直そうかと思ってます。素材があればいろいろ展開できるかもという邪な考えも持ちつつ。

 

 

森岡さんはコメンタリーのときにご覧いただきましたが、米村さんは今、BD用のHDリマスター版をはじめてご覧になったと思いますが、いかがですか?

 

米村

大画面映えしますね。

参考にDVDを見ながらマンガを描いてるんですけど、長岡監督は大作指向ですよね。

劇場並みの絵を見せようというコンテになってますから、TVとかPCのモニターで見ているよりアップコンバートされた高画質を大画面で見ると、監督の意図がより伝わる感じですね。見ていて気持ちいいし、印象が変わりますね。アップコンバートがうまくいってるおかげでもあるでしょうけど、これだけ大きくしても見劣りがしないです。

 

 

アニメの続編も期待されるところですが、戦旗の今後の展開、お話いただける範囲で構想など聞かせていただけますか?

 

森岡

今、アーヴ帝国はふたつに分かれているわけですけれど、アーヴというのは宿命遺伝子というのをもっていて、それで内部分裂を防いでいるということにしているんです。それでアーヴという集団が今、よんどころない事情で分裂しちゃっているんで、この宿命遺伝子の働きがちょっとおかしくなっているんですよね。

それが、どうなるかなというのが今後の話ですね。

最初の構想ではアブリアル=天照、なのでお姉さんと弟が争う話になるといいなぁと(笑)アマテラスとスサノオの対立ですね。

最初の構想ではそうだったんですけど、でも書いてみたら弟の方が非常に弱々しくなってしまったので、これはどうしようかと(笑)

なのでそのようになるのかどうかは、ちょっと今、考えているんですけれど。決して姉弟の対立構造という可能性が消えたわけではないのですが、まだどうなるかわかりません。

 

 

紋章アニメ化の際に川澄さん今井さんが森岡さんから聞いてたラストの構想と、長岡監督が聞いてた構想って2パターンあるようなんですが。

 

森岡

そうですね。

不幸な終わり方と、凄く不幸な終わり方。いや、違うな、凄いバッドエンドと普通のバッドエンドをそれぞれにお話したのかな。

今は、どちらかというと普通のバッドエンドに向かって話は進んでいます。

 

 

戦旗は全10巻構想だそうですが、残り4巻はどんなペースを想定されてますか?

 

森岡

なるべく早く(笑)

 

 

米村さん、スケジュールが押すのは、いろいろこだわられているのだと、完成した原稿を拝見するとわかるんですが、実際に一番こだわられているところを教えていただけますか?

 

米村

こだわりはいろいろありますが、一番の原因は加齢ですね(笑)

なにより描くスピードが昔にくらべてはるかに遅くなってる。

それと、これは完全にぼくのミスなんですが、アニメの設定を使うのでトーンを貼ることにしたんですね。ぼくはもともとトーンをあまり使う作風じゃないんですけど、アニメ準拠の表現をトーンですることにしたら、ありとあらゆる細かいところにトーンを使うことになって、作業が増えてる。

あとは画面密度が、ふだん描いてるマンガの3倍くらい濃くなってるので絶対的な作業量が多い。

小説とマンガの時間の流れ方が違うので、それのコンバートが大変。いろいろありますが、もう少しなのでがんばります。

 

 

では、最後に営業トークをお願いできますか?(笑)

 

森岡

BDボックスには、50枚の短編を書きおろしていますので、よろしくお願いします(笑)

価格的に、是非買ってください!は言いにくいので、余裕がある方は、お願いしますということで。

 

米村

ぼくもBDボックスのブックレットにカラーイラストを1枚描いてます。アニメ版とコミック版のラフィールを描きわけてみましたので、是非見てください(笑)

2019.08.09
サンライズフェスティバル2019
星界シリーズ
ゲスト情報解禁!

サンライズフェスティバル2019

星界シリーズ

ゲストが確定しました!

・森岡浩之(原作)

・長岡康史(監督)

・清水香里(エクリュア・ウェフ=トリュズ・ノール役)

 

チケット価格:2,500円(税込)

WEB購入窓口:8月16日(金)0:00~より販売開始

劇場購入窓口:9月14日(土)劇場オープン時より販売開始

 

http://www.sunrise-inc.co.jp/sunfes/2019/lineups/?id=seikai

2019.07.29
第58回日本SF大会 
「アニメ『星界の紋章』放送20周年記念 上映会」 当日レポート

2019.7.27
ソニックシティで開催された「第58回日本SF大会」~彩こん~会場で
「アニメ『星界の紋章』放送20周年記念 上映会」が行われました。


パネルトークのゲストには原作者の森岡浩之さん、現在連載中のコミカラ
イズを担当されている漫画家の米村孝一郎さんを迎え、裏話をまじえた濃い
トークが繰り広げられました。

少しだけ内容をお伝えすると『星界の戦旗』は全10巻構想で、のこりは
4巻。ラストは…とか、コミカライズの背景のアーヴ文字が…などここでし
か聴けない内容てんこ盛り。
その後HDリマスター版の『星界の紋章』第1話「侵略」第2話「星たちの
眷属」が上映され、好評のうちに幕を閉じました。

 

2019.07.26
第58回日本SF大会 Sci-con
 第58回日本SF大会 Sci-conにて
 7月27日(土)18:30~20:00
 『「星界の紋章」放送20周年記念上映会&トーク』を開催


上映内容
 HDリマスター Blu-ray画質版『星界の紋章』
 第1話「侵略」> 第2話「星たちの眷属」

 出演
  森岡浩之(原作者)
  米村孝一郎(コミカライズ担当)