第19話「サヨナラ」
2007/08/11放送
春香の目前で、雪歩はトゥリアビータから送り込まれたスパイである本性を現し、そしてインベルは千早によって持ち去られた。
亜美の救出作戦は失敗に終わり、圧倒的な不利に立たされるアイドルチーム。雪歩が乗り込み起動したヌービアムの重力レイヤーに弾かれ、春香は台地の下に広がるジャングルへと落ちていく。
モンデンキント本部は強襲部隊MSAを出動させ本格的な軍事行動に打って出る。ニューギニアのジャングルを舞台に展開する激しい銃撃戦。
ふたたびトゥリアビータに捕らえられそうになった亜美の目前で異変が起こる。突如、何もない空間から、亜美の危機に反応するように7年前に消えたテンペスタースが現れたのだ。出現したテンペスタースは、雪歩のヌービアムと、千早のインベルを圧倒する。
奇しくも5体のiDOLが出揃った事態に、モンデンキントもトゥリアビータも浮き足立つ。5体のiDOLの集結により「アウリンが開く」というのだ。そんな中、iDOL達は5体そろって共鳴しあい、次々に停止してしまう……。
この事態にモンデンキント本部は、正体を隠して軌道に乗せた「ウルトゥリウス」の使用を決断する。攻撃衛星であるウルトゥリウスのビームが発射された場合、5体のiDOLの消滅と、5億人規模の人的被害が予測された。
カラスの命によりウルトゥリウス迎撃に向かったエピメテウスは、圧倒的な攻撃ビームに曝されて瞬時に蒸発してしまう。そして、ニューギニアの地表にウルトゥリウスのビームが着弾するかという瞬間、そのビームは高度100m地点でテンペスタースによって受け止められる。
強烈なエネルギーを受け止めて破壊されていくテンペスタースのフレーム。
攻撃ビームの奔流の去った後には、テンペスタースのコアと、7年前に行方不明になっていた双海真美が残されていた……。
第20話「かえりみち」
2007/08/18放送
ジャングルに倒れ伏しでいるところをモンデンキント強襲部隊MSAに救出された春香は、モンデンキントJPへの帰還を連絡してくる。しかし、春香はその心に癒しがたい傷を負っていた……。
一方、モンデンキントJPでは、7年間行方不明だった双海真美が目覚めていた。再会を喜びあう双海姉妹。そして7年前の真実の一端が明らかになる。7年前の実験中に事故を起こしたテンペスタースは、その際、重傷を負った真美を治療するために虚数空間へと姿を消していたというのだ。自らの身体であるフレームと、蓄積した記憶を犠牲にして、今は深い眠りについているテンペスタースのコアを前に、姉妹の「歌」が子守歌のように響くのだった。
一方、トゥリアビータでは、インベルの改装が進んでいた。ふたたび純白のボディに塗り直され、春香の乗っていたコクピットは、千早の命により粉砕される。
そして、モンデンキントJPに帰還した春香……。
最悪の状況で、雪歩の正体を知り、インベルを奪われた春香の事を思い、モンデンキントJPのスタッフは腫れ物に触るような思いで春香を迎えるが、春香は極めて陽気な素振りで振る舞い続ける。何もなかったかのように基地内を走り回り、ラジオの収録をこなし、そして体力トレーニングに励む春香。しかし、千々に乱れるその心中は隠せるものではなく、親友であるやよいや、伊織に、それが自分自身を誤魔化すためのカラ元気であることを看破されてしまうのだった。
ついには自分自身が雪歩に宛てた誕生祝いの手紙を見つけて凍り付いてしまう春香。親友だと信じていた雪歩に裏切られ、離れがたい存在であるインベルと引き離された事実を改めて突きつけられ、春香はひとり自室にこもり泣き崩れるのだった……。
第21話「最後の・プリン」
2007/08/25放送
復興暦107年の大晦日、十六夜寮の自室に閉じこもり春香は沈み込んでいた。
インベルが去り、雪歩に裏切られたという重たい現実に耐えられなかったのだ。
一方、トゥリアビータでは、ようやくインベルと再会できた千早が喜びにひたっていた。
春香仕様に塗られていた胸のピンクを白く塗り直し、春香が使用していたコクピットを粉々に粉砕させる。
いまや、モンデンキントJPはドロップ排除のローテーションから完全に外されてしまっていた。
スタッフたちは年賀状書きや、ネーブラの整備で気持ちを奮い立たせようとするが、重苦しい空気は拭い切れない。
そのスタッフたちも知らないモンデンキントJPの最深部で、あずさは捕らえた敵対組織トゥリアビータのリファと対面していた。
リファは、未完成な存在のバスタルトであるあずさが、新しい人類の完成型のミシュリンクである自分を閉じ込めるのは許されない行為だと強がる。
その言葉に、あずさは遠い過去を思い出していた……。
モンデンキントでiDOL研究を進める天才科学者カイエン・ロ・ウと、テル・ロ・ウ夫妻。その夫妻に養女として引き取られたのが、
幼い日の三浦あずさと如月千早だった。ロ・ウ夫妻は2人をモルモットとして扱っていると研究員には陰で囁かれながらも、iDOLの研究は順調に進んでいるかに見えた。
だが、人類とiDOLを融合し、新しい人類を誕生させようというミシュリンクプランを巡ってカイエン・ロ・ウとテル・ロ・ウの考え方には溝が開き始めていた。
そんな中、夫妻それぞれの思惑を受けて、あずさと千早はミシュリンクへの改造手術を施される。それぞれの想いを胸に秘め……。
そして起こったドーン・オブ・パープルムーン<夜明けの紫月>事件。テル・ロ・ウは、カイエン・ロ・ウやモンデンキントと決別する。
カイエン・ロ・ウをはじめ、多くの人命を犠牲にして、その時にトゥリアビータは誕生したのだ。
その際、千早が持ち去る予定のインベルが起動せず、その後、インベルは14年間の眠りに付く事になる……。
迎えた復興暦108年、新年の夜明け。無人島へのドロップ落下とともに、モンデンキントへトゥリアビータからの通達が届く。
モンデンキントの有するすべてのiDOLを明け渡せというのだ。同時にモンデンキントJPには、モンデンキント本部より、アイドルチームの解散が命じられる。
第22話「鍵とバット」
2007/09/01放送
アイドルチームの解散命令と共に、モンデンキントJPにはモンデンキント本部からの強襲部隊MSAが乗り込んできていた。
次々と現場のスタッフを押さえ、施設内を占拠していく強襲部隊。
その指揮を執るのは朔響。彼はモンデンキントのトップである「グランドロッジの猫」の直属だったのだ。
5体のiDOLが揃えば「アウリン」が開く。「グランドロッジの猫」は、その危険を回避するためにiDOLを誰にも手が届かない虚数領域へと隠そうと言うのだ。
解散させられたアイドルチームは、配置転換としてモンデンキント内の通常業務部署へと飛ばされる。
自宅謹慎を命じられたジョセフ・真月を苦い表情で送り出す三浦あずさ。
そのあずさに、ジョセフは心の中で「命を無駄にするな」と呼びかける。あずさの様子に只ならぬものを感じていたのである。
一方、ずっと塞ぎ込んでいる春香の部屋へ伊織が乗り込んで来た。
春香に対して、待っていれば何かが解決するのか、自分でできる事があるならばそれをやれと、激を飛ばす伊織。
旧モンデンキントJPアイドルチームの面々は、ジョセフ・真月を筆頭に、本部に対する決起を画策していた。
ようやく立ち直った春香も合流しモンデンキントJP基地を取り戻すために作戦が立てられた。
やよいのラジオ放送を使い、基地内に押さえられている亜美・真美・蛍へとメッセージが伝えられて、一斉に内から外からの基地奪回作戦が行われる。
朔響から発砲許可が下りないため本格的な反撃に出る事のできない強襲部隊は、基地の隅々まで知り尽くしたスタッフによる奇襲により撃退されていく。
遂に司令室の奪回に成功するアイドルチーム。素直に司令室を明け渡し撤退していく朔響は、いぶしがるジョセフに、アウリンの何たるかのヒントを残していく。「アウリン」とは5体のiDOLが「鍵」となり開き、世界に災厄を振りまく「パンドラの箱」であると。そして、自分たちは、それに手を掛けてしまったのだと。
第23話「RUN!」
2007/09/08放送
東京には、モンデンキント発表による避難命令が出されていた。ドロップ落下の危険があるというのだ。
次々と東京から退避していく人々。しかし、その実は、トゥリアビータによる攻撃から人々を退避させる方便だったのだ。
モンデンキントJPでは迫るトゥリアビータに、どう対処するかが検討されていた。稼動するiDOLはネーブラ一機のみ、コアの状態で眠りに付くテンペスタースは戦力外である。対するトゥリアビータには、稼動するiDOLが3機と量産された擬似iDOLまでいるのである。
敵に全てのiDOLが渡れば、「グランドロッジの猫」の言う「アウリン」が開く。ロストアルテミスから100年の間、
地球の重力バランスを取ってきた存在が開放されれば、なにが起こるかは解らない。
しかし、一同は「iDOLの存在とは何であるか」に賭けて立ち向かうことを決意する。
そして、トゥリアビータのモンデンキントJPに対する攻撃が始まった。
千早のインベルを筆頭に、雪歩のヌービアム、真のヒエムス、量産されたエピメテウスが、無人となった東京を蹂躙する。
戦術核並みの威力を持つコラプサーを装備されたインベルが、新宿でその猛威を振るい、都心に巨大なクレーターが穿たれた。
ヌービアムとヒエムスは、モンデンキントJP基地から伸びるチャンネル(通路)を潰していく。
モンデンキントJP基地からの脱出口を塞ごうというのだ。
モンデンキントJP基地の直上で攻撃態勢に入ったインベルに、伊織のネーブラが立ちはだかる。
テンペスタースの能力を利用した作戦の時間を稼ごうと、獅子奮迅の勢いで敵を撃破してしていく伊織とネーブラ。
ようやくテンペスタースの「音」を利用した作戦が開始され、次々と行動不能になっていくiDOLたち。
しかし、インベルには影響が無い。ハーモニクス回路を全て切断されインベルの感覚は完全に封じ込められていたのである。
それでも、心を決めた春香は、決死の想いでインベルへと駆ける。跳び、転がり、ただインベルへ想いを伝えるために。
「好きです」
……その言葉が、インベルの「心」に伝わる。
「意識」を取り戻したインベルは、千早の乗るコックピットを射出し、落下していく春香を救うべく、その手を伸ばすのだった。
第24話「復興暦百八年」
2007/09/15放送
春香の命懸けの「告白」によってインベルは「意識」を取り戻し、トゥリアビータは東京から撤退していった。
そして、再びインベルにより拒絶された千早は、所属組織であるトゥリアビータの思惑を越えた行動に出る。テル・ロ・ウの研究であるiDOLと人間の融合を強引に果たそうというのだ。愛しい存在であるインベルと融合することに取り付かれ、トゥリアビータ基地のエネルギー供給を独占していく千早。
一方、逃亡させたリファの跡をつけたあずさは、トゥリアビータ基地への潜入に成功していた。あずさの連絡によりトゥリアビータ基地の所在はモンデンキント本部の知るところとなり、国連軍が投入される総攻撃が開始される。最終的には再び攻撃衛星ウルトゥリウスを使用して、トゥリアビータやiDOLをも消滅させることをモンデンキントのトップである「グランドロッジの猫」は決定したのだ。
千早の独善的な行動により、擬装暴風圏を消失し、頼みのエピメテウス群も稼働不能に陥ったトゥリアビータ基地の中では、巨大な廃棄区画にあるシュメルツオーフェンにエネルギー供給が集中していた。千早は自分自身をインベルと融合できる状態へと変えようとしていたのだ。それは千早の肉体の消失を意味している。そのことを哀しみながらも、千早への想いからオペレータとして従う雪歩。
そこへ姿をあらわし、千早を止めようとするあずさ。雪歩が向けた銃から、とっさにあずさを守ろうと飛び掛かった真によって銃が暴発し、その銃弾は千早に致命傷を与える。 瀕死の身でシュメルツオーフェンへと向かう千早を後に、テル・ロ・ウのもとに急ぐあずさ。自分の卵元細胞から造られたリファシリーズを蹴散らし、ようやく養母であったテル・ロ・ウのもとにたどり着く。
養父カイエン・ロ・ウと養母テル・ロ・ウが、激しく対立してまで研究してきたミシュリンクプランが、共に不幸な結果を招くことを訴えるあずさだったが、そのテル・ロ・ウはすでに意識を閉ざしており、トゥリアビータ幹部であるカラスの私的な復讐の道具として利用されているだけだった。
そのカラスも、千早がシュメルツオーフェンで変化した影響により変形し始めた基地内のパーツに押し潰される。そして、あずさとテル・ロ・ウさえも……。
やがて、トゥリアビータ基地が存在する島全体が浮上を開始する。
第25話「春の雪」
2007/09/22放送
千早の遺志によりインベルを求める雪歩と、その雪歩に会うために浮上したトゥリアビータ基地を目指す春香。
国連軍の攻撃と予期せぬ千早の暴走により、トゥリアビータ基地も壊滅状態だったが、起動し島の守りを固めるエピメテウス群は強力である。
モンデンキントJPでは春香をトゥリアビータ基地へと送り込むために、テンペスタースのコアを囮にエピメテウス群を引き付ける計略を練る。引き付けたエピメテウス群をネーブラで迎撃し、春香が雪歩に会うための時間を稼ごうというのだ。
エピメテウス群に数で押される伊織のネーブラの危機に、真のヒエムスが助太刀に現れる。姉と慕い、そして憎しみさえしたあずさとの最期の別れを通じて、その真意を知った真の心は氷解したのだ。
一方、「グランドロッジの猫」の指示によりトゥリアビータ基地攻撃の指揮を執る朔響は、攻撃衛星ウルトゥリウスによる攻撃準備を進めていた。「グランドロッジの猫」たちは、トゥリアビータもiDOLも、すべてを消滅させ、事後の世界を再び完全掌握しようというのだ。
モンデンキントJPアイドルチームは、モンデンキント本部とウルトゥリウス間の回線に侵入し、その攻撃ビーム照射を引き伸ばそうと奮戦する。
皆の協力により、ようやく雪歩と再会を果たす春香。あくまで親友として手を差し伸べる春香を、それは春香の独り善がりだと決め付けた雪歩は、千早とインベルを融合させるため、ヌービアムのシュープボーラーでインベルを撃ち抜く。
シュメルツオーフェンにより粒子化していた千早は、インベルとの融合を図るが、その一方的な「想い」はインベルによって三度目の拒絶をされてしまうのだった。空中へ拡散していく千早と、その「想い」……。
千早が拒絶された理由を、iDOLは自分を好きになってくれる存在と共に歩みたいと思っているだけなのであり、一方的な想いを受け入れたいとは思っていないのだと春香は語る。……千早のインベルに対する一方的な「想い」は「愛」ではなかったのだと。
その頃、「グランドロッジの猫」たちは、群れを離れた一機のエピメテウスによって壊滅させられていた。そのことにより全指揮権を掌握した朔響によって、遂にウルトゥリウスの攻撃ビームが照射される。
そして、ウルトゥリウスの攻撃ビームにより浮上した島が消え去った後には、インベルと春香、そして雪歩を守って粉砕されたヌービアムの残骸が残されていた。
第26話「月とペンギン」
2007/09/29放送
攻撃衛星ウルトゥリウスの直撃によってトゥリアビータのすべては消滅した。しかし、世界を取巻く状況は、その深刻さを増していた。
ウルトゥリウスの攻撃ビームから身を挺して、インベルや春香、そして雪歩を護り破壊されたヌービアムのコアが、衛星軌道上に出現したアウリンへと吸収されていた。それによりロストアルテミスから約100年の間、アウリンによって維持されてきた地球の地軸やオービタルリングの均衡が崩れ出しているというのだ。
モンデンキントJPで整備を受けるiDOLたちの間で、人知れず「協議」がおこなわれ、その結論が人間たちへと伝えられた。
自分たちがアウリンに吸収されることで重力変動を安定させようというのである。さらに自分たちがアウリンの代わりとなり重力場を安定させると。それは「彼ら」の消滅をも意味していた……。
iDOLたちの提案と、その決意を知って揺れ動くアイドルマスターたちをはじめとするモンデンキントJPスタッフの心。オペレーターや整備員を含め、iDOLに関わった人々にとって、すでに「彼ら」は心を持たない機械などではなかったのだ。
避難していた故郷から遠い道程を駆けつけて来たやよいに、「やりたいと思うことを全力でやってきた。後悔はしていない」と心情を吐露する春香は、ある決心を固めていた。そして、やよいに「わたしの彼氏」とインベルを紹介するのだった。
地球と、そこに暮らす人々を護るために、iDOLたちがアウリンに向かうその時がやってくる。しかし、無人のはずのコクピットには、それぞれのアイドルマスターの姿があった。インベルには春香、コアだけのテンペスタースを抱えたネーブラには伊織、それにヒエムスには真……。それぞれの想いを胸に秘め、iDOLとアイドルマスターたちは空高く飛翔していく。
崩れた重力バランスの影響か? またはアウリンの意思によるものなのか? iDOLの行く手を阻むように衛星軌道上を乱れ飛ぶドロップ群。それらを打ち砕き、彼らはアウリンへと進んで行く。
コアだけのテンペスタースが突入して作り出したアウリンへの入り口を、ネーブラとヒエムスが固定している間にインベルがアウリン内部に突入するのだ。ネーブラとヒエムスのフレームが圧壊していく隙を縫い、インベルと春香はアウリン内部へと突き進む。
……その一瞬、インベルと春香の意識が共鳴する。
生死を越えて共に在ることを望む春香から、インベルは片方のリボンだけをほどき取った。そして、春香の乗るコクピットは、地球へと向けて射出される。
アウリン内部で、5体のiDOLたちの位相融合がはじまる。iDOLたちが生み出す強大なエネルギーはアウリンのエネルギーを相殺し、オービタルリングさえも呑み込んでいった。宇宙にはかつての月の代わりに、iDOLの創り出した大輪の花が咲き誇っていた。
それを地上から見上げるのは、モンデンキントJPのスタッフたちや、ネーブラとヒエムスが最期の瞬間に脱出させた伊織と真。……そして春香。
その春香のアイにインベルからの最期のメッセージが届けられた。
「ダイスキ」と……。