更新情報
「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」にて「ガンダムCGの変遷と最前線」特集として、進化し続けるガンダムCGの変遷をたどり、『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の制作の舞台裏を大特集。
今回は、SNSでも盛り上がりを見せていた「白い悪魔」ことガンダムEXや、主人公機のザクⅡなど “モビルスーツ”のモデリングについて、共同制作のSAFEHOUSEから、モデリングアーティスト・木原瑞穂氏、モデリングアーティスト・田島眞悟氏、モデリング&シネマティックアーティスト・嶋岡薫子氏、リードモデリングアーティスト・山下秋介氏、モデリングアーティスト・長野共笑氏、エンバイロンメント&モデリングスーパーバイザー・鈴木卓矢氏、モデリングアーティスト・普久原 香鈴氏、モデリングアーティスト・留目貴央氏、モデリングアーティスト・坂田冬士氏、モデリングアーティスト・小山内 澪氏による、スペシャルインタビューの様子をお届けします。
―モデリングとUE上での検証を並行して行い、本作の仕様を探った
『 復讐のレクイエム』の本格的なMS制作は、2020年9月頃から始まった。「メカニカルSVの山根公利さんが、最初にザクII F型とガンダムEXのラフデザインを描いてくださいました。“ミリタリーに寄せたリアルテイストにしたい” という要望を受けて描かれたテイク1がほぼ1発OKだったので、テイク2で若干の調整をお願いした後、細部はモデリングしながら詰めることにしました。三面図があると線をなぞるだけになってスタッフの目が成長しないので、情報量の少ないラフの状態からモデリングに着手させてもらえることは、部下をもつ上司としてはとても有難かったです」と鈴木氏はふり返った。ちなみにガンダムシリーズのMSデザインは、キャラクター寄りのものと、メカ寄りのものに大別できる。例えば『機動戦士ガンダム』や『水星の魔女』のMSは前者、『閃光のハサウェイ』のMSは後者だろう。本作はリアルテイストだが『機動戦士ガンダム』と同じ一年戦争時代の物語なので、“中間よりも、ややキャラクター寄りにする” という方向性も、BNFによって初期段階に決められた。
制作にあたり、SAFEHOUSEにはバンダイナムコフィルムワークス(以下、BNF)から既存作品のアセットが提供されたが、山根氏が描いたラフのシルエットは既存作品のザクIIやガンダムとは大きく異なっていたため、既存アセットは使わず、ラフの印象をイチから再現することにした。一方で61式戦車などの一部のメカは、既存アセットに手を加えた上で使用した。「最初にザクII F型の制作に着手した時点では本作の仕様が決まっておらず、モデリングとUE上での検証を並行して進めました。仕様が確定し、ザクII F型が完成するまでに約半年を要して、UV展開は4回やり直しました。プリレンダリングであれば基本的にポリゴン数の制限はありませんが、本作はリアルタイムレンダリングだったので、ザクII F型の場合は約110万ポリゴンに留め、マテリアルの数も抑えてあります。山根さんの形状チェックと、本作の仕様との板挟みの中で、最適なバランスを探りました」と山下秋介氏(リードモデリングアーティスト)は語った。
=ザクII F型のデザインとモデリング=
A:山根氏によるザクII F型のラフデザイン。後述するガンダムEXとは対象的な、重
厚感のあるデザインになっている。テイク1では両脚外側の動力パイプが膝から離れ
ていたが、戦闘時に木などに引っかかるという理由で、中間部分を膝に固定するデザ
インへと変更された
B:ラフモデルに対する、山根氏による修正指示。「体形のバランス修正に加え、細部のベベル感や、パイプのたわみ具合にいたるまで、様々な改善策を提示していただき、すごく勉強になりました」(山下氏)
C :ザクII F型のリグ。ボーン数は370。MSのリグはザクII F型用とガンダムEX用の2種類で、グフカスタムはザクII F型のリグ、ジムはガンダムEXのリグを流用した
D :ルックデヴまで完了したザクII F型(ソラリ機)
=ガンダムEXのデザインとモデリング=
A: 山根氏によるガンダムEXのラフデザイン/
B :修正前、C :修正後、D :完成モデルの下肢前面。
「当初はMSを工業製品としてつくりましたが、お客さんが感情移入できるキャラクターとしてつくってほしいとアニメーターから指摘されました。その意識をもって山根さんのラフを見直すと、人間のアナトミーを彷彿とさせる有機的なシルエットになっていることに気づけたので、ポリゴン数を増やしてつくり直しました」(山下氏)
E: ガンダムEXのポリゴン数は約154万(左肩のビーム・サーベル以外の武装は除く)でボーン数は226。「デザイン時には、ホラー映画に出てくる森の奥に潜む怪物や、巨人をイメージしたと山根さんから伺いました」(山下氏)
F ~ J :ガンダムEXの壊れバージョンは5体つくられ、各話の戦闘状況に合わせて使い分
けられた。「Brosdau監督が各話の壊れバージョンを何枚も描いてくれたので、それらを笠岡さん(ディレクター・オブ・フォトグラフィ 笠岡淳平氏)と一緒に整理して、5体に絞り込みました。単純に壊れていくだけではなく、基地に戻って整備された後は、1回リセットして汚れを減らしたりといった調整もしています」(鈴木氏)
K ・J :の頭部の拡大。人間の頭蓋骨の眼窩を彷彿とさせる壊れ方が印象的だ
ガンダムEXのロケットランチャーの、L: 展開時、M: 収納時、N: 完成モデル。
「MSの武器だけでも20個以上あったので、モデリングアーティストの方からデザインを提案させていただく場合もありました。山根さんは快く受け入れてくださったので、楽しかったです。ロケットランチャーは展開時のままだと持ち運びしづらかったので、短く畳んで背中に装着できるしくみを提案しました。伸縮ギミックはつくらず、カット単位でい
ずれかを使い分けています」(鈴木氏)
全容は是非、「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」を是非チェックしてください!
https://cgworld.jp/magazine/cgw316.html