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「富野由悠季の世界」展島根会場開幕記念イベント「元気のGはグラントワのG!富野由悠季×山根公利、島根で語る」トークショーレポート!

2020年01月15日イベント
劇場版 GのレコンギスタOVERMANキングゲイナー伝説巨神イデオン機動戦士ガンダム

1月11日(土)より島根県立石見美術館で好評開催中の「富野由悠季の世界」巡回展。
その初日を飾る記念イベントとして「元気のGはグラントワのG!富野由悠季×山根公利、島根で語る」が行われました。
イベントには、富野由悠季監督と『OVERMAN キングゲイナー』、『Gのレコンギスタ』等に参加したメカデザイナー・山根公利さんが登壇し、島根という土地が生み出すデザインやクリエイションについて、語りました。
 

 アニメーション制作会社の多い東京都を離れ、現在は地元である島根県に住む山根さん。
富野監督は山根さんの描く線の確かさと独創性は、個人的な能力だけではなく、土地の力="地力"(じりき)が土壌になっているとし、
「人間というのは体の中に地域、土地の力を反映させている部分があるんだろう。生まれたときから持たされていたとか、育っていく上で身につけた空気感、地域でのものの考え方を、好き嫌い関係なく体に身に付けているものなんだろうと思います。それが東京に出てきたために削ぎ落とされて、才能だけで仕事をする人をいっぱい見てきた。能力がフラットになってクリエイティビティが無くなっていく」と実際の経験を語ると、
山根さんも「1990年代の終わり頃にアニメの企画もオリジナリティを失ってきて、周囲もマンネリになっていた印象があったんです。"地力"を一度確認するために島根に戻ってみるという選択肢もありかな、と思ったんです。もう一つはインターネット、メールの普及ですね。科学技術を利用するのもメカデザイナーの役目ではないかと思いまして」
と、"地力"の存在を語りました。
 

メカをデザインする過程で、富野監督と山根さんは、ほとんど打ち合わせをしないとの事。
富野監督は、
「山根さん相手にはラフも出さないで、お願いすると勝手に送られてくる。細かいリテークは出しません。出せないんです。山根ラインの持っているメカの雰囲気は固有なものがあるので、うかつな線の改変は要求できないんです。
山根デザインには、東京慣れした、その時の流行りを取り込んでニュートラルに描いた感じが無いんです。全直しかOKかしか無い。
島根という所は世界中でもここしかない。絶対的に固有なものです。小賢しい知恵を持った人は国をかなぐり捨てるんですが、その瞬間、無国籍人になってしまうくらい固有なものを無くしてしまう。
皆さんは土着性をマイナスに捕らえていただきたくない。それぞれの土地に固有の匂いを作品に封じ込めていく努力をしていただきたい」
と、その土地で育まれる感性の重要性を語りました。
 

 

そして山根さんは、自身と同じく島根県出身の石見美術館の澄川喜一館長とのエピソードを紹介。
「澄川さんはスカイツリーのデザインなど『反り』を得意とされています。
その『反り』のセンスが好きでお話できて光栄だったのですが、『カウボーイビバップ』のソードフィッシュIIをご覧になって、『感性が似ている』と褒めていただいて嬉しかったです。ルーツを考えた時に、石見には、たたら製鉄の文化があるので刀の『反り』に根源的な何かがあるのかなと」と言うと、富野監督も「それは絶対ある」と太鼓判を押していました。
 

続いて話題は、現在劇場版が公開中の『Gのレコンギスタ』へ。
「今の『ガンダム』で誤解されている事を解き明かしていくために、作らなくてはいけない!と思って作りました。なので『ガンダム』のつもりで観た人には理解不能と言われました。
ものの表現というのは、根本的な所で何を押さえているのか、何を考えているのか、を見抜く能力が鑑賞者にも必要になってくる。だけれども、アニメに理解力は必要なのか?というと基本的には不要で、観て楽しければ良いのであって、その上で気になることは思い出して欲しいな、という作り方をしています。
『機動戦士ガンダム』は、アニメでもちょっとだけ本物っぽい話が作れるかもしれない、という事だけでやった。『ガンダム』の時代は終わって、アニメも新しい時代に入ってきて、"地力"のついたメッセージを持った作品を作らなければと思っています」
と、『G-レコ』を新しいアニメとして制作している意気込みを語りました。



展覧会「富野由悠季の世界」の島根県立石見美術館での会期は、3月23日(月)まで。
今回のトークショーの他にも様々なイベントがありますので、ぜひともお越し下さい!

 

▲山根さんがデザインした中で印象に残っているメカは?という質問に山根さんは『OVERMAN キングゲイナー』の「バッハクロン」が気に入っていると回答。
「シルエット・マンモス」という言葉からマンモスをイメージしたデザインに、「全体を囲むラインの強固さが見事に一つの形を作っているなと思います。使用用途がはっきり分かる」と富野監督。
 

▲今回の対談のために山根さん自ら3日ほどかけて制作してきた「アディゴ(『伝説巨神イデオン』)」のジオラマ! 
「アディゴ」は富野監督自身ががラフデザインを描いています。
「完成度が高くてコクピットの位置が絶妙。機首の先端に人が乗っているので、メカの巨大感をひと目で演出しているデザイン」 と山根さん。
 

 

▲島根会場の物販コーナーでは、地元の老舗和菓子店「三松堂」とのコラボ商品で、シャア専用焼印が押された「シャア専用源氏小巻」が販売されています。数量限定!